フランスのバター

 


久しぶりにフランスから輸入されているバターを使ってみました。

わかってはいたことですが、日本のバターに比べてそのあまりの違いに感を新たにしました。違いは何といってもその乳化力です。

基本的なサブレ生地をシュガーバッター法で作ってみました。バターに砂糖を混ぜ、次に卵を混ぜて乳化させますが、簡単にあっという間に乳化して混ざってしまうのです。しかもしっかりと強くつながる感じがあるのです。温度調節もおおざっぱに、卵も4回に分けて加えただけにもかかわらずです。

混ぜていて楽しくなります。日本のバターで作る時はいささかの苦痛と闘いながら混ぜなければならないのとはまるで違います。

日本のバターを使った場合では、材料の温度に細かく気を配り、卵はほんの少しずつ、混ぜかたにも細心の注意を払って混ぜなければならないし、それでも分離することはしばしばあるし、分離しなくてもなんとも頼りないつながりかたを感じることがほとんどなのです。

違いは乳化力だけではありません。食べてみた時、日本のバターは妙に脂っぽい感じがあるのに比べて、フランスのバターは脂っぽさを感じません。バターだけを食べてみてもそうですし、サブレ生地を焼いても脂っぽさをまったく感じなく、さくさくとした軽やかな出来上がりとなりました。

ブリオシュも作ってみました。

ブリオシュ生地はパン生地の一種ですが、バターがたくさん入るのが特徴です。そのバターが日本のバターだと生地の中にとても入りにくいのです。

混ざりにくいので結果こね過ぎになりがちです。グルテンが過度に出過ぎて、歯切れも口どけも悪くなります。手ごねだと手の温度でバターがすぐに溶けそうになります。出来上がった生地を手でさわるだけでもすぐに脂が浮いてきて、ふくらみも焼け方も悪くなるし、焼き上がりのブリオシュもなんとも脂っぽい感じになりがちなのです。

これがフランスのバターだと「あれーっ!」と叫んだくらい、簡単にバターが入ってしまったのです。

焼き上がったブリオシュは最高のおいしさでした。

サブレ生地を作りながら、そしてブリオシュ生地をつくりながらも「これじゃー!」と叫んでしまいました。

「これじゃー、何もかもが違うじゃないか!」と思ったのです。

日本料理は水の料理、中華料理は油の料理、フランス料理はバターの料理と言われます。フランス料理もフランス菓子もバターを使わないものはたくさんあります。しかし、バターを使う、バターで調理をする、バターで味をつける、バターはその根幹をなす最も重要な材料のひとつであり、他の料理に比べてバターを使うのがお菓子も含めたフランス料理の最も大きな特徴のひとつなのです。バターをどう使いこなすかが、その作り方の基本と言えます。

そのバターがこれだけ違うのではすべてが違うじゃないか、すべてが似て非なるものになってしまうじゃないか。ほんもののおいしさなんていつまでも分からないままじゃないか。

水の料理と言われる日本料理を、例えばご飯を炊く、ダシをとる、お茶をいれる、あるいは日本酒を醸造する、そばを打つ、豆腐を作るといったことを、石灰分の多い硬水で作るのと同じことになってしまうのではないか。

あらためてそう感じました。

日本のバターがフランスのバターのレベルになることを願うばかりです。


(追記)

今回使ったバターは市販の輸入品の中では比較的安価なもので、風味は弱いですが、その乳化力はさすがと思わせるものでした。なお、風味が弱く感じられたのは、パッケージ、温度管理、保存期間などの条件によって本来の風味が衰えていたせいかもしれません。


りんごがあった!


 お菓子に使えるりんごがありました!


「ブリーズ」というニュージーランドから輸入されているりんごです。

ニュージーランドのりんごはほかにも、ジャズ、ロイヤルガラ、プリンスなどいくつもの種類が輸入販売されていますが、このブリーズはお菓子に使うのに適しています。
4月から6月頃に日本で出回っているということです。
これまで、このブログでも、その前のヤフーのブログでも何度も訴えてきましたように、日本ではお菓子に使うのに適したりんごはほとんどないと、なかばあきらめていました。
りんごの話 りんごは小さいほうがおいしい タルトタタン
しかし、このブリーズというりんごを煮たり焼いたりしてみたら、なかなかいい感じなのです。甘味は充分、酸味も少しあり、香りはさほど強くはないのですが、火を通してもちゃんと残ります。
何よりも果肉がきめ細かく充実していて、煮ても焼いても身縮みが少なく、薄切りでオーブンで焼いても皮だけになってしまうようなことが少なく、これはお菓子に使うのにふさわしいりんごだと言えます。
また、生で食べても、繊維が強すぎず、さくさくと小気味よく食べれます。
お菓子には保存しておいて少し柔らかくなってから使うのがいいようです。
香りがもう少し強くあってくれれば申し分ないのですが、それでも今日本で手に入るりんごの中では、煮たり焼いたりしてお菓子に使うりんごとしては最適なものではないかと思えます。
(遠くからやってきていますし、ニュージーランドではもっとおいしいものなのかもしれません。)



りんごのクランブルタルトを作ってみました。生のりんごを乗せて焼いたにもかかわらず、空焼きしていない生地が湿気ることもなく焼け、香りも充分に残り、上々の出来。久しぶりにおいしいりんごのタルトを堪能することができました!

やっと見つけて喜んだのもつかの間、もうシーズンが終わってしまうようです。残念ですが、また来年の楽しみとすることにします。


火を通して使うりんご、お菓子作りに適したりんごがこの日本でも作られるようになることを切に切に望みます。

※このブリーズりんごですが、大変残念ながら、翌年(2023年)のものは出来がいいものではありませんでした。  (2023.7.5)