パウンドケーキは簡単だと思われています。材料はシンプルだし、バター、砂糖、卵、粉をただ順番に混ぜていくだけだし。お菓子作り初心の人がまず作ってみようと思うものがこのパウンドケーキのようです。
でも、実はパウンドケーキが最も難しいお菓子の一つなのです。
何が難しいって、乳化です。このただ順に混ぜていくだけの方法はシュガーバッター法と呼ばれます。シュガーバッター法によるパウンドケーキの作り方では、乳化がすべてといっていいくらい、乳化が決め手なのです。乳化がうまくいかなければおいしいものにはなりえません。
この乳化が難しいのです。バターと砂糖を混ぜたところに卵を加えて混ぜ、分離しないよう乳化させるのがとにかく難しいのです。シンプルなだけに融通もきかないし、途中修正もできません。
そもそも水と油は混ざりません。卵は水分が多く、バターは脂肪分がほとんどです。それをいわば騙し騙し混ぜていくのだから簡単ではないのです。
1番目の原因は材料の品質によるものです。バターと卵の品質の問題です。
では、どうしたらいいのか?
もう何十年も前、フランスから戻ってきてしばらく経った頃のことです。パウンドケーキやアーモンドクリームなど、バターに等量の卵を混ぜるものがことごとく分離をしてしまい、途方に暮れたことがあります。
フランスではそんな経験がなかったからです。混ぜ方など特に気にすることもなく、分離などすることもなく、簡単に混ぜられていたからです。
いったいどうしたことか?
混ぜ方は大事ですが、たくさんの試作をしていく中で、フランス産のバターを使い、卵の品質のいいものを選んだら、比較的簡単に乳化させられることがわかりました。やはり材料が大事なのです。
もう一つの方法は作り方を変えてみることです。
パウンドケーキの作り方には、この、順にまぜていくだけのシュガーバッター法だけでなく、共立て法や別立て法もあります。
別立て法はいくつかありますが、卵白を泡立てて混ぜる作り方をします。これは卵白の泡立て方と混ぜ方にやや難度の高い方法となります。